「地域経済の循環」をデータで可視化し、運用できる仕組み
地域通貨は、地域内の消費を促し、コミュニティのつながりを強めるための有効な施策です。
しかし実務では、紙商品券や単発キャンペーンに留まり、「運用負荷」と「効果測定の難しさ」が壁になります。
本プロジェクトは、行政・福祉団体・地域コミュニティの利用を想定し、デジタル地域通貨を管理するSaaSを 設計したものです。単なる決済機能ではなく、施策の継続運用と改善(PDCA)を可能にする“地域経済のOS”を目指しました。
課題:地域通貨は「配る」より「回す」が難しい
ヒアリングを通じて、現場には次のような典型課題がありました。
- 紙商品券は発行・配布・換金・精算の管理コストが高い
- 不正利用や重複利用を検知しづらい
- 利用履歴データが残らず、施策の効果測定ができない
- 地域経済の循環(どこで使われ、どこへ戻るか)が可視化されない
- ブロックチェーン導入の是非が判断できず、設計が固まらない
地域通貨の成功条件は「発行すること」ではなく、継続的に循環させ、効果を見える化し、改善し続けることです。
そのために必要なのは、決済アプリではなく「運用できるSaaS設計」でした。
アプローチ:ブロックチェーン“あり/なし”を前提から設計する
地域通貨プロジェクトでは、ブロックチェーン採用が目的化しがちです。
g9nでは、要件(監査性・透明性・コスト・運用体制)から逆算し、ブロックチェーンを使う場合と使わない場合の両方を設計し、 意思決定可能な比較材料を提示しました。
1. 台帳設計(Ledger)と監査ログ
まず「誰が・いつ・どこで・いくら使ったか」を改ざん困難な形で残すために、トランザクション台帳(Ledger)を設計。
監査ログ(Audit Log)と合わせ、行政の説明責任に耐えるデータ構造を整備しました。
2. アカウント/ウォレット設計と権限管理
住民・加盟店・運営者(行政)で求められる機能と権限が異なるため、RBAC(Role-Based Access Control)を前提に設計。
利用者側は「ウォレット的な体験」を維持しつつ、運営側は不正検知・制限・失効などの管理ができるようにしました。
3. KPI設計とダッシュボード
地域通貨の価値は、利用額だけでは測れません。
本設計では、以下のような運用指標を前提にデータモデルとダッシュボード要件を定義しました。
- 循環率(地域内で再利用された割合)
- 再利用率(一定期間内に複数回使われた比率)
- 参加率(住民・加盟店の参加/アクティブ率)
- 施策別効果(キャンペーン/福祉施策ごとの効果比較)
技術構成(設計)
- Frontend:Next.js
- Backend:Node.js
- DB:PostgreSQL
- 認証:JWT / RBAC
- 台帳:DB台帳(標準) / EVM系ブロックチェーン(オプション)
- 監査:監査ログ・変更履歴(運営者向け)
ブロックチェーン採用時は、オンチェーンに載せる情報を最小化し、個人情報や詳細データはオフチェーンで管理する方針を想定。
これにより、透明性とプライバシー/運用性を両立できるようにしました。
成果:施策を「配布」から「運用」へ移行できる設計
本プロジェクトの設計により、地域通貨を継続施策として運用するための前提が整いました。
- 発行・利用・精算の運用をデジタル化し、事務コストを削減できる構造
- 不正・重複利用の抑止につながる監査性の担保
- 利用履歴データを活用した施策効果の定量化
- 行政報告に耐えるダッシュボード要件の定義
- ブロックチェーン採用可否を判断できる比較設計の提示
地域通貨は「やる/やらない」ではなく、どう回し、どう改善するかが成果を決めます。
g9nは、そのための“運用できる設計”を最優先に置きます。
今後の展望
- 福祉ポイント(健康・介護・ボランティア)との連携
- 地域イベント/施設利用との連動(インセンティブ設計)
- カーボンクレジット・環境施策との接続
- AIによる消費行動予測と施策最適化(配布設計の高度化)
g9nは、地域通貨を単なる決済手段ではなく、地域の行動をデザインするための基盤として捉えています。
行政の説明責任、現場の運用負荷、住民の体験価値。そのすべてを満たすSaaS設計を提供します。
